「お前は、いつでも、」
「うん?」
振り返った九郎の脳天気な顔が恨めしくて、将臣は眉根を寄せた。解っちゃいないからもどかしい。人を苛つかせる天才だという言葉は喉の奥で保留。今言いたいのはそういうことじゃない。
「お前は口を開けばいつも、兄上、先生…、ついでに、弁慶、なんだな」
「どういうことだ?」
解らないのか、これだけ言って。将臣は怒鳴りそうになる自分の気持ちを何とか鎮めながら吐息した。落ち着け、落ち着け、怒っている訳じゃない、そう見せなければならない。だって、怒りたい訳じゃない、叱りたい訳じゃない。ただ、ただ。
「少しぐらい俺の方を見ろって事だ」
うん?、と九郎が首を傾ける。至極不思議そうに。直接言わなければ駄目なのか、将臣は額を抑えた。直接言うのは、何だか憚られるから、言いたくないのだけれど。将臣の中で小さなジレンマ。九郎はきょときょとと将臣を見つめていた。
「…将臣の方を見ろ、って言われてもな…いや、俺はお前を見ているじゃないか」
「どこがだよ、この鈍感」
「どっ、鈍感だと?!」
これ以上言っても無駄な気がしてきて仕方がない。将臣は溜息をひとつ落とす。九郎は憤慨した様に肩をいからせていた。そうしたいのはこちらの方だ。いや、先程の言葉は確かに怒る要因にはなったかも知れないが。
「もういいよ。うん、もういい。なら振り向かせるまでだから」
「は?や、おい、将臣?!どういう事だ?!」
あいつに頼った自分が馬鹿だったってことだ。将臣はひとりごちた。










やきもちをやく。






















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