「だって、九郎さんが、強い私を望んだから。戦女神って」
ねえ九郎さん、掴んだ腕が痛いよ、どうしてそうやって掴むの。痛いよ、九郎さん。九郎さんの力は強いんだから。
「私は強くならなくちゃいけないんだもの。皆を、守らなきゃ。だって私、白龍の神子だから。…ううん、それだけじゃない、それだけじゃなくて。私、九郎さんの願いに、期待に、応えたくて。だから私、強くありたかったの。だって、九郎さん、喜んでくれるかなって思って」
なのにどうして泣くの。どうして顔を上げてくれないの。ほら、雨が降ってきたよ、九郎さん。帰ろう、本陣へ帰ろうよ。きっと皆心配してる。
「強くなると、ね。九郎さん、すごく喜んでくれるでしょう。私、それが嬉しくて。だから、九郎さんの役に立ちたかったの。九郎さんのために、わたし、」
「それ以上言うな」
かすれてる。声が掠れてるよ、九郎さん。雨音に掻き消されそうなぐらいに、小さな声。いつもの、九郎さんらしくないね。どうしたの、ねえ。
「それ以上言うな…望美っ……俺は、俺はっ、お前を、…お前に、こんなことを、望んだ、わけじゃっ…」
ぎゅって。強く抱きしめる。九郎さんの腕の力は強いから、ねえ、骨が折れちゃいそうだよ。ちょっと、痛い。ねえ、九郎さん。
「…くそっ」
ねえ、九郎さん。―――服に、血が着いちゃうよ、返り血だけど、まだ乾いてないから。
「…九郎さん、きっと皆待ってるよ、弁慶さんもヒノエくんも、皆待ってるよ」
九郎さん、離してくれない。それどころか、もっともっと強くなったんじゃないかな、ほんとに、痛いぐらいに。じわじわ、雨がしみていく。九郎さん、風邪引いちゃうよ。
「…帰ろうよ、九郎さん」
ぽたり。あ、涙がこぼれてきた。










願いに似た祈り






















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