遠吠えは夕焼けの向こうへと消えてゆく。
打ち上げられた砂浜を叩いて、ヴィラルは何度も何度も慟哭した。嗚呼この哀しみを寂しさを悔しさを惨めさを、一体誰へぶつければ良いのか。或いは自分、或いはカミナ、或いはガンメン、或いは破片、或いは空、或いは水、或いはあの夕焼け。
だが譬え鳴き喚いた所で、敬愛すべき上司は戻ってはこない。尊敬して、そして愛していた上司。
一度目にはまず怒りを覚えた。守った筈なのにカミナに吹き飛ばされて、戻ってきた時にはチミルフはもう居なかった。怒りと共に不甲斐なく思って、鳴いた。あの人間に必ず復讐をすると、必ずチミルフの仇を討つと、そうして頭を下げて、アディーネの下へ入ったというのに。
またこの腕は何も守れず、そうしてまた何も出来ず失っていくのか。自分だけが生き残って、のこのこと帰ってきて、全く何様だ。
(チミルフ様、)
いっそ一緒に死んでしまいたかった。人間に殺されるなんて何処までも屈辱だが、自分よりも大切な人を失ってしまうぐらいならば、ならば一緒に、自分が死んだ方が幾分もマシだった。
(アディーネ様、)
どう思った所で、どう悔やんだ所で、どう喚いた所で、二人は戻ってこない。思い返せば別に優しくして貰った記憶なんか無いのだけれど(チミルフ様は信頼してくれたっけ、アディーネ様はどうだか解らんが。)それでも自分よりも大切で、何処までも、どうしようもなく、大事にしたい二人だった。嗚呼だけどもう遅い、もう二人は戻ってこない。解っている、解っている。
仇は必ず返すとこの心と腕に誓って、そうして夕焼けを睨む。遠吠えは夕焼けの向こうに消えてしまった、誰も聞く事は無い。何と虚しい事か。

だけどもう一度、鳴かせて下さい。










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