今の自分を占めているのは、あの男だ。
ジェレミアはふとそんな事を思った。そうして頭を振った。自分は何を考えているのだと。そうして思い直す事にした。占めているのは、あの男のせいで自分の人生が一転してしまったせいなのだ。それ以外の、何でもない。ある筈が無い。それ以上の感情は無く、それ以下の想いも無い。…無い、筈だ。
あの男、ゼロ。
ゼロに初めて出会ったのは、枢木スザクを護送している時の事だった。テロリストが来るであろう事は解りきっていた。その上での行動だ。そしてその場で、この手でテロリストを捕らえてやろうと。…した、筈なのだが。途中からぱったりと、その時の記憶が無い。気付いた時には自分が捕らえられ拘束され、ギルフォードに終わりを告げられ、そして今に至る。聞いた話によると、自分はゼロに命じられた通りすんなりと枢木スザクを逃がし、更に逃げようとするテロリストも見逃そうとし、当然の様にそれを阻止しようとしたヴィレッタやキューエルを攻撃した。それはまるで、自分がゼロの味方であると言わんばかりの行動。
「…いや、…私がそんな事をする筈が…」
無い。ある訳が、無い。自分は誇り高きブリタニア軍人であり、テロリストに屈するなど想像するだけで不快になる。枢木スザクの件に関しても、名誉ブリタニア人などというものを消し去る為の良い道具であり、何があろうと逃がす積もりなど無く。だと言うのに、教えられた自分は、それは自分では無かった。自分では無い。ジェレミア・ゴットバルトでは無いジェレミア・ゴットバルトだった。
意味が、解らない。
考え直しても、必死に記憶を呼び起こしても、目を閉じても、何をしても、思いつかない。思いつかない。思いつかない。
そして何を考えても、最終的にゼロに結びつく。
彼の事が忘れられない。確かにゼロは自分の敵で、自分の人生を変えた原因で、なのに、どうしても彼の事を消し去れない。執着と言えば確かにそうだ。だが、敵に対する執着とは違う気がする。ジェレミアは、あの男を、ゼロを憎んでいる筈だった。だがそれと紙一重の位置にある妙な感情が、ゼロを思い出す度に沸き起こる。抑えようもない。ジェレミアは、頭を抱えた。意味が解らない、意味が解らない、意味が解らない!
あの男は何者だ。あの男は何なんだ。あの男は自分に何をした。自分はあの男に何をされた。あの男は何がしたい。自分をどうしたい。あの男は何を言っていた。どうして、どうして、あの男が、
「……くそ…」
あの男が、こうも気になるのだ。










理解不能






















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