愛しているよという言葉では妙に嘘臭い気がする。
だからと言って、大好きでは、きっと物足りない。


情事の後の気怠い雰囲気は、目覚めた朝には無い。眩しい程の朝日に照らされて、利家は目を開いた。ぼんやりと、薄く。動こうとして、よく見知った腕に抱きしめられている事に気付いた。愛しい腕、というと気恥ずかしいけれど。よいしょ、とゆっくり寝返りを打つと、政宗はまだ夢の中だった。いつもの眼帯はしていない。昨日は先に寝てしまったから、きっと、後で外したのだろう。眼球が無くて僅かに窪んだその瞼を見遣る。もぞもぞと腕を動かして持ち上げ、そっと、その窪みに触れる。反発する物は無かった。当たり前か、と思って、利家はそこから手を離した。ぼんやりと、政宗の寝顔を見つめる。
(…こうやって見ると…幼い顔をしているんだよなぁ…。)
政宗と利家はそう年が離れている訳ではない。きちんと政宗の年齢を聞いた事は無いから、確実では無いが、多分自分と同い年か、一つか二つ上下するだけだろう。利家は童顔だが(認めたくはない。)、政宗はどちらかと言うと大人っぽい顔立ちだと思った。出会ったばかりの時は。けれどこうして、心を交わして、付き合う様になってからは、そうでもないと思った。兎に角、寝顔が幼すぎるのだ。ともすれば、利家よりも。驚く程、幼くて、驚く程、可愛らしい。
(可愛いなあ。)
利家がそう思ってしまう程に。政宗本人に言えば、多分怒るから、言わないが。利家は、この寝顔は自分だけの特権だと思っていた。正確には違うかも知れない。けれど、こんなにも気を許す寝顔をするのは、自分と共に居る時だけだと、利家は、心の何処かで確信していた。いっそ自惚れと取られても構わない程に。
そうしてぼんやりと、政宗の寝顔を見つめていると、政宗が薄く目を開いた。あっという間にもう一度眠りについてしまいそうな程、細く。政宗は、利家を見つめて、僅かに情けない顔をした。そして、利家を抱いていた腕に力を込め、思い切り利家を引き寄せる。勢いこそ無いが、利家は少し驚いた様に政宗を見た。政宗はそんな利家の首筋に顔を埋めて、もう一度目を閉じた。どうやらまだ、夢の中に居るらしい。
(…夢で、某に会えなかったのかな。)
つくづく乙女の様な、思考になったと思う。乙女でなければ子供だ。利家はそんな事を考えて、腕を伸ばして、よしよしと、政宗の頭を撫でてやる。そうすると、歪んでいた政宗の顔が和らいだ。そしてまた、小さく寝息を立て始めた。
「大丈夫、某は、傍に居るぞ、政宗」
眠る政宗へ囁く様に、小さく、利家は言った。近い位置にあるその頭を優しく抱きしめてやり、自分ももう一度、目を閉じる。
「ずっとずっと、傍に居るからな」
最後にそう言って、頬を擦り寄せて、そうして、眠気に誘われるまま、利家も眠りに落ちた。

(ああ、この言葉がしっくり来る。)










シガフタリヲワカツマデ





















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